2022.03.04

赤目四十八滝キャンプ場

初めの一歩を踏み出そう!楽しい地域の寄りどころ「赤目四十八滝キャンプ場」を運営する一般社団法人「滝川YORIAI」 重森舞さん、洋志さんたちの物語

三重県の西部、伊賀地域に位置する名張市は、大阪方面へ電車で1時間圏内でありながら、豊かな水と里山の自然に恵まれた、都会と田舎の中間地点。景勝地である赤目四十八滝では、大小様々な滝と、四季折々の景色が迎えてくれる。

▲赤目四十八滝を代表する「五爆」のひとつ「不動滝」

▲赤目四十八滝を代表する「五爆」のひとつ「不動滝」

そんな赤目四十八滝の麓で、赤目四十八滝キャンプ場を運営する一般社団法人「滝川YORIAI」事務局長の重森舞さんと、代表理事の重森洋志さんにお話を伺った。

 

大事な資源を残したい

赤目四十八滝キャンプ場は、1993年に作られた公営施設。老朽化に伴い、2017年には市議会で閉場が決まっていた。

舞さん:キャンプ場は、私たち赤目の住民にとっては、子どもを遊びに連れて行ったりした思い入れのある場所。閉場のことを聞きつけ、大事な資源がなくなるのは嫌やなぁ、なんとかできないかなぁと、行政に掛け合いました。誰に言っても、「決まったことやからひっくり返すのは無理だ」と言われたけれど、地域の皆さんが力を貸してくださって、一回お試しでやってみてくれますか?と自分たちで運営するチャンスをもらいました。

舞さん、洋志さん、理事の堀内さんは、2018年から、指定管理制度※で、これまでの運営主体である長坂営農組合と1年間、キャンプ場を共同運営した。そして、2019年には、3人ともそれぞれに仕事を持ちながら、正式に自分たちの手で運営を開始。一般社団法人「滝川YORIAI」を立ち上げ、赤目四十八滝キャンプ場をリニューアルオープンさせた。

※公の施設をノウハウの ある民間事業者等に管理してもらう制度のこと

▲山々に囲まれた、赤目四十八滝キャンプ場。

▲山々に囲まれた、赤目四十八滝キャンプ場

▲リニューアルオープンの際に立て直したバンガロー。

▲リニューアルオープンの際に立て直したバンガロー

▲バンガローの中。窓の外には滝川が流れ、ゆったりと寛げる。

▲バンガローの中。窓の外には滝川が流れ、ゆったりと寛げる。

 

地域の皆で盛り上げる

▲左から、理事の堀内さん、スタッフの有馬さん、事務局長の重森舞さん、代表理事の重森洋志さん

▲左から、理事の堀内さん、スタッフの有馬さん、事務局長の重森舞さん、代表理事の重森洋志さん

 

舞さんたちの行動力は、地元の人にとっても、良い刺激になっている。洋志さんの同級生も、滝川YORIAIの立ち上げに触発され、赤目町の活性化のため、居酒屋を開業した。

舞さん:皆が「自分でやってみよう!」というムードで、盛り上がってきています!

町の自治協会が、子ども対象のイベントをキャンプ場で開催してくれたり、5月にはキャンプ場横の滝川に鯉のぼりを吊るしてくれたりと、地域の皆でキャンプ場を盛り上げようという動きも盛んだ。

2020年には、地域住民と市外の大学生の交流を通じて、地域の魅力を再発見するプロジェクトを行うなど、地域ぐるみでの新たな取り組みも生まれた。

▲地域×大学×行政×法人で取り組んだ、地域資源発掘プロジェクトの様子

▲地域×大学×行政×法人で取り組んだ、地域資源発掘プロジェクトの様子

洋志さん:皆が助けに来てくれるな。赤目って人材の宝庫。小さい田舎なので、隣近所の人が分からない土地じゃなくて、あの人ああいう特技持ってるわとか、そういうのが拾い易い。

舞さん:周りの方が凄くて!皆がキャンプ場を活用して「こんなんしてみたら?」とか、「こんなんしてみたいねんけど」って、色んな使い方をしてくれるようになってきていて。私たちはその繋ぎ役、ハブになってきているので楽しいです!

 

ここで踏み出す初めの一歩

単にキャンプ場というよりも、地域コミュニティの場、地域の方が活躍できる場を目指したいという舞さんたち。更にワクワクする想いを話してくれた。

舞さん:私、子どもが5人いるんですけど、将来、仕事を求めて大阪、名古屋、東京などに出て行ってしまうんじゃないかと不安なんです。地域の子どもたちには、もし何か自分で生業を育ててやってみたい!ってなった時に、ここを拠点に新たなチャレンジができる場になればいいな、という想いがあって。何か始めたい、開業したい人が始められる場所にしたいと思っています。

▲調理棟もリニューアルし、広々と使える。

▲調理棟もリニューアルし、広々と使える。

スタッフの有馬さんには、将来、飲食店を開きたいという夢がある。今は試験的に、キャンプ場の調理棟を使って、デッキにお客さんを集め、1Dayのランチ営業を試みるなど、チャレンジの機会を楽しんでいる。

▲これまでにキャンプ場で開催された、マルシェのチラシ

▲これまでにキャンプ場で開催された、マルシェのチラシ

他にも、赤目四十八滝でカフェを営むオーナーが、赤目の町と滝を盛り上げたいという想いで、キャンプ場を使ってマルシェを開いた。当日は、地元のハンドメイド作家や飲食店が出店し、来場者数が1,000人を超えるなど、新たな風が吹いている。
また、コロナ禍においては、ワーケーションプランに取り組むなど、新たな事業も始めた。

舞さん:初めての取り組みの一歩目、きっかけを作れる場所であれたらいいな。

 

地域のニーズに応えるアイディア

地域のハブとなるなかで、地元の方からの相談も受けるという舞さんたち。町内の耕作放棄地や、農業の担い手不足、空き家の活用法など、田舎が抱える課題に対し、これまでも、キャンプ場を基点とした農業体験を企画するなど、自分たちらしく楽しみながらアプローチしてきた。

▲大事なことは焚き火を囲んで話す。

▲大事なことは焚き火を囲んで話す。

洋志さん:例えば農業体験に100人来てくれて、1人でも田舎の畑に携わってみたいって思ってくれる人がいたら、将来的には赤目への移住につながるかもしれない。そんなきっかけを作っていこうと思っています。

今後は新たに、名張、赤目の移住体験をメインにした宿泊プランを展開できないかと、検討中だ。

舞さん:キャンプ場のお客さんから、移住するための家を探していると相談を受けることもあれば、地域の方から、空き家の借り手おらへん?と聞かれることもあって。そこを上手く繋ぐ仕組みを作れたらいいな、と今考えています。

理事の堀内さんは、昨年、祖母の実家の古民家をリノベーションし、「吉田屋」と名付け、一棟貸しできるレンタルスペースとして運営を始めた。そうした地域の拠点とも連携し、実際に移住した雰囲気を体験してもらえる「トライアル移住」もこれから実現させたいと試みている。

▲赤目四十八滝キャンプ場から車で3分ほどのところにある「吉田屋」

▲赤目四十八滝キャンプ場から車で3分ほどのところにある「吉田屋」

▲居間からは田畑の風景が見える

▲居間からは田畑の風景が見える

▲地域の元左官屋さんや水道屋さんが、堀内さんのためなら!とリノベーションを手伝ってくれたキッチン

▲地域の元左官屋さんや水道屋さんが、堀内さんのためなら!とリノベーションを手伝ってくれたキッチン

 

地域の方に喜んでもらえる事業に!

食べることが好きだという舞さん。好きな食べ物を伺うと、「伊賀米!」と元気にお答えいただいた。

舞さん:私、愛媛から三重に嫁いで来て、びっくりしたのが水、米、肉、全部美味しいこと!こんなにも美味しいものがある地域に嫁がせてもらって、ありがとうございます(笑)

しかし、伊賀米の買値は下がりつつあり、米作りから遠のく農家さんもいる。

舞さん:農家さんが手塩にかけて作ったお米が収入に繋がらないのが悲しいし、これからも美味しいお米を食べ続けたい。

農家さんのモチベーションが上がるようにと、舞さんたちは近隣農家から直接お米を仕入れ、キャンプ場やインターネットでの販売を昨年から始めている。農家さんと自分たちの利益に繋がる収益事業に育てようと奮闘中だ。

▲一人キャンパー用に、ミニサイズの伊賀米も販売。昨年は「とにかく伊賀米の美味しさを知って欲しい」と、キャンプ場で配布をおこなった。

▲一人キャンパー用に、ミニサイズの伊賀米も販売。昨年は「とにかく伊賀米の美味しさを知って欲しい」と、キャンプ場で配布をおこなった。

 

舞さん:うちだけが一人勝ちじゃなくて、常々「三方よし」になるように、何をするにも考えていて。全員が喜ぶ事業じゃないとやらないって徹底して取り組んでいるので、もっと地域の方に喜んでもらえるような、地域の経済の底上げができるような形にしていきたいです。

地域の大事な資源を蘇らせた舞さんたちは、ハツラツとして、楽しそうだ。田舎の課題と捉えられがちなことも、舞さんたちと地域の力を掛け合わせれば、楽しい未来に育っていくだろう。

 


取材協力

一般社団法人滝川YORIAI

赤目四十八滝キャンプ場

〒518-0469

三重県名張市赤目町長坂941-1

TEL:0595-63-9666

HP:https://www.akame-camp-ground.com

Instagram:https://instagram.com/akame_camp_site/

Facebook:https://www.facebook.com/akamecampsite/

 

古民家一棟貸しの宿 吉田屋

〒518-0464

三重県名張市赤目町柏原44

HP:https://yosidaya.net/

Instagram:https://instagram.com/kominka_yado_yosidaya/

 

取材:2022年1月20日

文:WEBマガジンOTONAMIEライター canny

写真:松原 豊

 

 

 

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