2024.03.21

CENTURIO® POWER LAND

定年後は畑仕事をして過ごしたい。その思いで京都から美杉へ移住。友人の一言から農泊をはじめることになった「CENTURIO® POWER LAND 」川瀬景子さんの物語。

大自然と共存する暮らし

 

美杉町は津市の南西部に位置し、津市全体の約3割の面積を占めている。その大半が山林に覆われた、自然豊かな地域。三重県で唯一の森林セラピー基地に認定されており、美杉町内に12コースの「森林セラピーロード」がある。「CENTURIO® POWER LAND 」は「森林セラピーロード」の日神西浦コースの出発点にある自然豊かな場所。

野菜や米を育て、それらを調理して食べる田舎暮らしや、観光地とは違うありのままの大自然と一体になれる体験を届けている川瀬景子さんに話を伺った。

すぐ隣の山の中で野菜を栽培している

 

川瀬さん:定年退職後は畑仕事をしたくて、京都から移住して来ました。空き家バンクや田舎暮らしで良い物件が無いかと探していた時に出会ったのがここ美杉にある一軒家でした。見学に来てとても気に入り、1歳でも若い時にスタートしたいと思い早期退職をして田舎暮らしをはじめました。

 

古民家を2年かけてリフォーム

 

田舎暮らしをはじめた当初、農泊をするつもりは全く無かったという川瀬さん。友人が遊びに来た時に「こんなにいいところなんだから民宿をしたらいいのに」と言われたことがきっかけで民宿をはじめることに。約2年掛けてリフォームをして現在、丸5年「CENTURIO® POWER LAND 」を営んでいる。

 

庭にあるテントサウナ

 

周りの声に耳を傾け、取り入れているという川瀬さん。庭にあるテントサウナは、東京から訪れたお客さんが「こんなところでサウナに入れたら最高だなー」と言う言葉を聞いて購入した。

 

自然農で栽培されたラディッシュ

 

川瀬さん:農薬や肥料を使わない自然農で野菜を栽培しています。肥料を使わないのでうちの野菜は小さい。けれど甘くて栄養価の高い野菜が育ちます。

自然農とは自然に任せて、自然の力で、自然を模した環境で「耕さず、肥料・農薬を用いず、草や虫を敵としない」栽培方法。

 

つやつやの夏野菜

新鮮野菜が中心の朝食

 

川瀬さん:野菜をあまり食べないというお子さんの親御さんから「そちらの野菜を食べてから子どもが野菜を食べるようになった」と言ってもらえた時は嬉しかったです。私自身も以前より野菜をよく食べるようになりました。

 

石窯で焼く手作りピザ

 

連泊の人に人気のピザは1枚1,000円とお値打ち。「ここで採れた野菜を使って作っているから、お金が掛からないの」とほほ笑む川瀬さん。

 

畑の隣りにある田んぼ

 

川瀬さん:去年から自然農でお米づくりもはじめました。近所の先輩農家さんたちが「できたか、できたか」、「肥料も入れずに米が育つのか」と心配してくれます。お米の出来はまだまだでしたが赤米は美味しくできました。今度はコシヒカリの種を植えて、美味しいお米作りを頑張ってみます。

もみどころを作って種を植え、育った苗を手で植えて育った稲を手で収穫する。稲作は重労働だ。自然農ははじめて3~4年経つと微生物が元気になり、土が健康になるそう。自然の力と共に美味しいお米作りに励み、身近な人たちと美味しく食事をする時間を楽しみにしている様子が伺えた。

 

昔ながらの足踏脱穀機

羽釜で炊いたご飯は絶品

 

川瀬さん:移住して来るまでお米を羽釜で炊いたことも、巻き割りをしたこともなくて、何もかもが初めてのことだらけでした。そんな私を支えてくれたのがご近所の皆さん。自分が“知らなかったこと”を経験しているから、お客さんが“知らないこと”が分かるんです。自分が教えてもらったことを、今度は自分が先生になってお客さんに伝えています。

地域の人たちとの交流も大切にしている川瀬さん。冬に開催されたイベントの際には、関係者や協力者に羽釜で炊いたご飯と粕汁(かすじる)を振る舞った。粕汁の具材は地元の人が持って来てくれた大根や里芋などの野菜を入れて作ったという。

 

地域の皆さんと花畑づくりも行う

 

川瀬さん:夏にはひまわり、秋にはコスモスを育てる花畑づくりを地域の皆さんとしています。一緒に作業をすることで仲良くなれます。この時はコスモスの種を撒くのが早過ぎて、夏にひまわりとコスモスが咲きました(笑)。

5人以上のグループで地域活性化補助金の申請ができることを知り、「何かしない?」と声を掛けたら15人程の人が集まってくれました。その補助金で冬は国道沿いにイルミネーションを施しました。

冬になると17時には道が真っ暗になることに驚いたという川瀬さん。国道をイルミネーションで彩ることで、仕事帰りの人へお疲れ様の気持ちを届けると共に、街灯の役割りも担っている。

 

春から夏にはキジもよく見かける

 

川瀬さん:アメリカから旅行に来られた結婚前のカップルが滞在した時、台風が直撃したんです。その時、一緒に避難所へ避難しました。普段、外国の人との交流が少ない地元の人たちがお菓子をたくさん持って集まって、みんなで食べました。その日は午前中から夕方まで避難所で過ごし、無事に宿に戻りました。お菓子の食べ過ぎで夜ご飯がいらないくらいお腹いっぱいだと言っていましたね。結婚したらまた来る!と言ってアメリカに帰って行かれました。私にとっても印象的で良い思い出です。

 

足場の悪い渓谷を軽快に進む川瀬さん

 

美杉の自然を広めたい!滝巡りコースガイドも

 

川瀬さん:天気の良い時には滝の案内もしています。空気が良くて自然豊かな場所で、マイナスイオンで癒されますよ。夏は滝つぼで泳ぐお客さんもいます。

舗装のされていない、自然のままの道。グラグラの岩や湿った葉っぱの上を通ることもあるので、いつも何気なく行っている「歩く」という行為に集中していった。ありのままの大自然の中、滝を目指して歩いて行く内に、心がすっきりしていく感覚を味わった。

 

末広がりに流れ落ちる「日神大滝(ひかわおおたき)」

 

川瀬さん:はじめに通った「日神不動滝」は雨が降った時だけ水が流れる「幻の滝」。2つ目が四季折々の美しい自然の中を流れる「日神小滝」。そしてここが「日神大滝」ですよ。まだこの先にも「いもづかの滝」という滝があります。

ここに初めて来た時、80代の方が山道をすいすい歩いて案内してくれたことに驚いたという川瀬さん。今では山道を歩くことにも慣れ、森林セラピー希望者への滝巡りコースガイドもベテランだ。

 

日神不動院とオハツキイチョウ

 

川瀬さん:これが県の天然記念物に指定されている「オハツキイチョウ」です。隣りに建つ「日神不動院」は元旦になると地元の人たちがお参りに来ますよ。

 

炭火で焼かれる鮎の塩焼き

 

川瀬さん:二人の息子が愛知県に、娘が京都で暮らしています。私が京都で暮らして居た時はあまり会いに来なかった息子たちが、今はよく遊びに来るようになりました。疲れを癒しに来ているみたいです。お客様にお出ししている鮎は、実は息子たちが釣って来てくれたものなんです。息子たちも応援もしてくれているのを感じますね。

 

りんごと梨の木を2本ずつ植えたそう

 

庭にも植えたばかりの果実の木や原木しいたけの栽培場所、ビニールハウスなどがある。初めてのことにも意欲的にやってみよう!と取り組む川瀬さん。とても生き生きとした姿が魅力的だ。

 

2階の窓からの景色

川瀬さん:最近、お隣に若いご夫婦が移住してきて、すぐ近所でカフェをオープンしました。若い人が増えるのはとても嬉しいです。うちへ来てくれたお客様にも、ランチやお茶ができるカフェがあることを薦められるので有難いです。

現在川瀬さんは、「津市田舎暮らしアドバイザー」として田舎暮らしに興味がある人、古民家を探している人に美杉での暮らしを伝える活動も行っている。

 


 

取材協力
「CENTURIO® POWER LAND」
〒515-3536 津市美杉町太郎生4882-2
電話番号:090-2195-4186
HP: https://centurio.international/salon/powerlandmie

取材:2023年2月13日
文・写真:ライター 西川 亜紀

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