2025.04.01
ゲストハウス亀成園自然の中で暮らす:家族で選んだ田舎暮らしとゲストハウス「亀成園」成岡真清さんの物語。

三重県松阪市飯高町、古くは和歌山街道、参宮や巡礼の道として栄え、現在も神秘的な景観で人々を魅了する香肌峡に程近い山間に、ゲストハウス亀成園はあった。
松阪市街から自動車で1時間余り、飯南町・飯高町の自然豊かな山間部を駆け抜けていくと、清流にほど近い森の縁に、近隣の農家によく似た肌合いの風景に馴染む建物が2棟。そのうち1棟が1日1グループ限定、1棟貸しのゲストハウス亀成園である。
自然体験が盛りだくさん、滞在型の自然体験豊富なプランを有する、古民家一棟貸のゲストハウスをご紹介する。

亀成園
ちらちらと小雪の舞う1月、ゲストハウス亀成園の8畳二間の部屋で、成岡さんに話を伺った。
都会の喧騒を離れ、自然豊かな三重県で新しい生活を始めた成岡さんご夫妻。築100年の古民家を改装したゲストハウス「亀成園」は、宿泊だけでなく、ニワトリとの触れ合い、畑仕事、罠猟体験など、様々な自然体験を楽しむことができる。愛犬と同伴も大歓迎だ。
大阪出身の成岡真清(なるおか・ますが)さんはなぜこの場所を選んだのだろう。

ゲストハウス「亀成園」を営む成岡 真清さん
移住先として三重県を選ぶきっかけとなったのが、学生時代の自転車旅で出会った三重県の豊かな自然だった。
成岡さん:学生時代に全国を自転車で旅をしていて、割と色々な田舎や山とか行っているんですが 、南紀の辺りが結構好きで、山が豊かで明るいし、子供を連れて移住しようっていう話になった時に三重県のこの辺がいいな、と思いました。
こうして移住を決意した成岡さん。田舎での子育てと自然とともにある暮らしを求めて、ゲストハウス亀成園を始めた。
成岡さん:2016年にこの地へ来まして、最初は都会と行ったり来たりの二重生活から始めて、2020年にゲストハウス亀成園を始めました。移住自体は子どものため、というのがいちばんの理由です。子どもを田舎で育てたいという思いと、豊かな自然の中で自分も毎日発見があったらいいなという気持ちがあって、たくましく生きていきたいなって。今のところ、それは全部叶っています。
いのちの大切さを学ぶ「自然養鶏学習農園」としての亀成園

ゲストハウス横にあるニワトリ小屋
ゲストハウス亀成園では様々な農家体験・暮らし体験を提供している。成岡さんのニワトリへの愛情を感じながら、まずはニワトリに関する体験の内容をお伺いした。
成岡さん:ニワトリ体験は自然養鶏学習農園という言葉を使っています。ご希望があればニワトリ解体の体験もしていただけます。命をめぐってお子さんの体験を増やしたいと言うお客様にご好評で大変お問合せが多いです。

ニワトリ小屋と優しくニワトリを抱きしめる成岡さん
宿泊客に提供される朝ごはんは、このニワトリたちが生んだつやつやで弾力のある卵を使った卵かけごはんだ。飯高産の「とっとき味噌」を使った味噌汁とともに、ここでしか味わえない贅沢な一品である。
ニワトリたちから命の大切さと、食へのありがたさを学べる貴重な機会だ。
自然養鶏学習農園以外にも、命をいただく意味を考える体験がある。
成岡さん:罠猟師の体験講座があります。問い合わせも多いです。こちらは主に鹿なんですが、鹿の脚一本を解体する体験もあります。
他に山に囲まれた環境ですし、すぐ近くに川があって夏場は川あそびができます。ご家族やグループで泊まっていただいて、時には連泊もして、しっかりさまざまな体験をしていただくお客様が多いですね。登山の基地に使われる方もいらっしゃいます。
ニワトリ解体や罠猟という他にはない命を考える体験に加え、家族みんなが楽しめる川あそびや星空観察、自然農の畑での収穫と学びの体験や新茶摘み体験など、幅広い客層の心に刺さるものがここにはある。

夏には川遊び
ちなみに、ゲストハウス亀成園では、愛犬との滞在も可能だ。
成岡さん:こちらは犬の同伴OKです。私たちも犬を飼っていますし、大型犬も大丈夫ですよ。
親子山村留学のススメ・まずは体験から、そして移住も
この地に根を張って生きる成岡さん。ゲストハウス亀成園の経営に加え、過疎が進む地域を何とかしたい、田舎での子育てのよさをより多くの人に知ってもらいたいという思いから、地元の小学校である松阪市立香肌小学校での山村留学の活動も積極的に行っている。
成岡さん:親子山村留学という活動もしています。親子山村留学に、このすごく近くにある綺麗な校舎の学校、香肌小学校なんですけど、オンラインで説明会して1回現地来てもらいます。そして、体験入学を3日ぐらい、小学校に通うということができます。その時にも亀成園へ泊まってもらっています。 気に入ったら空き家バンクなどで住まいを探して本格的な移住をしてもらいます。今香肌小学校の児童さんたちの半分以上が移住してきた方たちなんですね。親子山村留学もそのほかの活動も地域とよく連携していますし、地元の皆さんも受け入れてくださって、もうみなさん顔見知りです。
田舎ならではの体験を求めて集まる山村留学の参加者を積極的に受け入れて、相談にも乗っており、中には実際に移住する家族もいる。受け入れてくれる地域の人々のあたたかさに支えられ、着実に新しい仲間が増えていく。

親子山村留学の舞台である松阪市立香肌小学校
お客様は世界中から・インバウンド、英語と中国語対応
亀成園を訪れる人は実に多種多様だ。近年は日本人だけでなく、外国から訪れる利用客も増えており、この地域の魅力を国内外の人々に伝えている。
成岡さん:ゲストハウスを始めて最初のお客様は登山の方でした。それから徐々に子どもさんにいろいろな体験をさせたいというご家族連れが増えてきました。海外の方たちもそうです。連泊しながらこの地域のことを深く味わってくださっています。中国や北米、ヨーロッパと世界中から来ていただいています。そのほかお伊勢さんへ行く途上の方、自転車の旅の方などさまざまな方にいらっしゃっていただいています。冬も雪が降る時がありますが、薪ストーブの趣に喜んでいただいています。

薪ストーブ

宿泊施設の築100年の古民家
今後の展望は
自給自足をモットーに、ゲストハウス亀成園で笑顔あふれる田舎暮らし体験を提供し、地域での活動の輪を広げている成岡さん。今後の展望について聞いてみた。
成岡さん:これまでやってきましたように、森歩きやご案内の中で一過性の観光以上の深い体験をしていただけたらと思っています。ニワトリ解体や罠猟師体験もそうですが、ここでしか味わえない体験を提供していきたいですね。
ゆっくりお話を伺って、求めていた場所に暮らす落ち着きと、伸びやかさを感じた。鶏ふれあい、自然農の畑で収穫、お茶摘み、薪割り、鹿の脚1本解体体験や鶏解体体験など街暮らしでは経験しがたい体験、罠猟師の暮らし講座など、いずれも深い学びを得つつ「楽しくのびのび」が基盤にあった。また近くにある、松阪市で一番校区の広い香肌小学校の親子で山村留学など、地域の人に支えられたさまざまな取り組みに感銘を受けた。

取材協力
ゲストハウス亀成園
〒515-1615 松阪市飯高町森1711-2
電話番号: 050-7107-7847
取材:2025年1月11日
文 :後藤宏行
写真:大西康博
※写真一部「ゲストハウス亀成園」提供